所有者不明土地等の発生予防と利用の円滑化の観点から、 民事基本法制の見直しが行われます
●相続で取得した不要な土地を手放すための制度
相続土地国庫帰属制度の創設 令和5年4月27日施行
相続等により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させることが出来る
《要件》
①相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により取得した土地 であり、
②通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する以下の土地に該当しないこと
(通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地とは)
・建物や通常の管理又は処分を阻害する工作物のある土地
・土壌汚染や埋設物のある土地
・崖がある土地
・権利関係に争いがある土地
・担保権等が設定されている土地
・通路など他人によって使用される土地
《手続き》
①承認申請
(申請出来る人:相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により取得した人
(共有地の場合は共有者全員での申請)
②法務大臣(実質審査は地方法務局)による要件審査・承認
③10年分の土地管理費相当額を申請権者が納付
※ 本記事執筆時点(2022年10月7日時点)で、この点に関する政令が未制定であるため、詳細は不明です。
現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)について見ると、粗放的な管理(見回り等の簡単な管理)で足りる原野であれば約20万円、
市街地の宅地(200㎡)であれば約80万円と法務省内部で想定されている模様です。
※承認の通知を受けてから30日以内に納入しない場合には、承認の効力は失われる
④国庫帰属
●登記がされるようにするための不動産登記制度の見直し
(1)相続登記の申請義務化
・不動産を取得した相続人に対し その取得を知った日から3年以内に相続登記申請をすることを義務付ける 令和6年4月1日施行
(正当な理由のない申請もれには過料の罰則あり)
・相続人申告登記の新設 令和6年4月1日施行
△相続人が登記名義人の法定相続人であることを申し出ることにより、申請義務の履行手段の一つとする。
(相続人単独での申告可能・添付書類も被相続人と相続人の関係がわかる程度に簡略化)
△登記官がその者の氏名や住所などを職権で登記
・所有不動産記録証明制度の新設 令和8年4月までに施行
特定のあるものが名義人となっている不動産の一覧を証明書として発行することにより、相続登記が必要な不動産の把握が容易になる。
・登記名義人が死亡などの事実の公示 令和8年5月までに施行
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登記官が住基ネットなどの他の公的機関から死亡などの情報を取得し、職権で登記に表示する。これにより、登録名義人の死亡の有無が確認が可能となる。
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(2)住所等の変更登記の申請義務化 令和8年4月までに施行
・所有者の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付ける
(正当な理由のない申請もれには過料の罰則あり)
・登記官が他の公的期間から取得した情報に基づき、登記官が職権で変更する
《手順》自然人
①登記申請の際に、氏名・住所のほか。生年月日などの検索用情報の申し出を行う
②登記官が、検索用情報等を用いて 住民基本台帳ネットワークシステムに照会し、Sっ余裕権の登記名義人の氏名・住所等の異動情報を取得する。
③登記官が、取得した情報につき、登記名義人に対し、住所などの変更の登記をすることについて確認を取ったうえで、変更登記をする。
《手順》 法人
①法人が所有権の登記名義人となっている不動産について、会社法人番号を登記事項に追加する。
②商業・法人登記システムから不動産登記システムに対し、名称や住所を変更した法人の情報を通知する。
③取得した情報に基づき、登記官が変更の登記をする
●所有者不明土地の利用の円滑化を図る方策 令和5年4月1日施行
・個々の所有者不明土地・建物の管理に特化した財産仮制度を創設する。裁判所が管理命令を発令し、管理人を選任する。
・所有者が土地・建物を管理せずに放置していることで、他人の権利が侵害される恐れがある場合に、管理人専任を可能とする制度を創設する
・裁判所の関与の下で、不明共有者に対して広告等をしたうえで、残りの共有者の同意で、共有物の変更行為や管理行為を可能とする制度を創設する。
・裁判所の関与の下で、不明共有者の持分の価額に相当する額の金銭の供託により、不明共有者の共有持分を取得して、不動産の共有関係の解消する仕組みを創設する。
・相続開始から10年経過したときは、個別案件ごとに異なる具体的相続分による分割の利益を消滅させ、画一的な法定相続分で遺産分割を行う仕組みを創設する。
・ライフラインの自己の土地に引き込むための導管等の設備を他人の土地に設置する権利を明確化し、隣地所有者不明状態にも対応できる仕組みを創設する。
・土地の所有者は、リンチの竹木の根が境界線を越えるときは自らその根を切り取ることが出来るが、枝が境界線を越えるときはその所有者に枝を削除させる必要があった。この原則を維持しつつも、以下の場合には、土地の所有者が枝を切り取ることが出来る。
①竹木の所有者に越境した枝を削除するよう催告したが、相当の期間内に所有者が竹木を切除しないとき
②竹木の所有者を知ることが出来ず、その所在を知ることができないとき
③急迫の事情があるとき
蒼天行政書士事務所からのお知らせ
※本民事法制の見直しについては、行政書士業務として行えるものが多くあります。
民法改正、相続国庫帰属法の改正については、蒼天行政書士事務所に遠路なくご相談ください。
当事務所は、日本行政書士会連合会が行った「令和3年度民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」研修を受講・修了しています。(修了証No:
1734482650)
※不動産登記法の改正、及び行政書士として対応することが出来ない一部の分野については、旧知の司法書士、弁護士と連携して対応致します。